【開運さんぽ・ご利益】
疫病を払う神様・スサノオ


 太古の昔から、人類は病原菌による疫病(えきびょう)と闘ってきました。医学がまだ十分発展していなかった時代には、伝染病(流行り病)は悪霊や怨霊の仕業だと信じられ、神仏に祈るしかありませんでした。病気に対するご利益を持つ神仏はたくさんいらっしゃるので、その中でも流行り病を払う神様をご紹介します。


●疫病・厄難災除けの神様、スサノオノミコト

 日本の神様で防災除疫の神として有名なのは、スサノオノミコトです。国造りの神様、イザナギノミコトとイザナミノミコトの間に生まれ、天照大神の弟に当たります。日本神話ではさまざまな逸話を持っていますが、ヤマタノオロチ退治のように闘いに強く、荒神という性格から災難や病難の除去のご利益が生まれたのでしょう。

 スサノオの表記方法は「古事記」や日本書紀」などで異なり、速須佐之男命、須佐之男命、素戔男尊、素戔嗚尊等、須佐乃袁尊、須佐能乎命などたくさんあります。
 スサノオを名乗る神社も全国に数多くありますが、こちらも素盞嗚神社、素戔嗚神社、素盞鳴神社など漢字が少し違うのでご注意ください。
 ウィキペディア(https://ja.wikipedia.org/wiki/素盞嗚神社)によると、スサノオ神社は愛知県と近畿地方(大阪府、兵庫県、奈良県)に非常に多いようです。

 東京には南千住に素盞嗚神社があります。
 素盞嗚神社の創建は延暦14年(795年)。昔から疫病除けで知られ、安政5年(1858年)、江戸にコレラが流行したときには疫除守を求める参詣者が押しかけたそうです。現在は南千住や三ノ輪など地元61町の総鎮守です。
 毎年4月8日には神社創建を祝うお祭り、疫神祭が行われます。4月1日〜8日には災厄を祓う「桃の御守」が期間限定で授与されます。

P4302869

P4302865


 そのほかにもスサノオを祀る神社はたくさんあります。
武蔵一宮 氷川神社(埼玉県大宮市)
全国天王総本社 津島神社(愛知県津島市)
八坂神社(京都東山区)
熊野本宮大社(和歌山県東牟婁郡)
日御崎神社(島根県簸川郡)出雲観光ガイド 
須佐神社(島根県簸川郡)


●牛頭天王=スサノオを祀る祇園信仰

 毎年7月1日〜31日の1ヶ月間、京都の町で優美に繰り広げられる祇園祭(ぎおんまつり)。八坂神社の祭礼ですが、元々は疫病災厄の除去を祈るお祭りです。
 平安時代の朝廷は、疫神や死者の怨霊を鎮める「御霊会(ごりょうえ)」というお祭りを神泉苑で行っていました。貞観11年(869年)、全国で地震が起こり、京にも疫病が流行したとき、全国66ヶ国にちなんだ66本の鉾を立てて諸国の穢れを祓い、さらに洛中の男児が祇園社(八坂神社)の神輿を神泉苑に送る御霊会を行いました。これが祇園祭の始まりとされます。
 ちなみに、現在の祇園祭のクライマックスは前祭と後祭の山鉾巡行ですが、この山鉾行事は八坂神社の主催ではなく、山鉾町が主催する行事で、重要無形民俗文化財に指定されているのはこの山鉾行事だけだそうです。

 八坂神社は明治の神仏分離令まで比叡山に属し、「感神院祇園社」と呼ばれて、祇園祭も「祇園御霊会(ぎおんごりょうえ)」という名前でした。
 祇園社のご祭神は牛頭天王(ごずてんのう)。仏教の聖地・祇園精舎の守護神であり、疫病を祓う力があると信じられていました。この神仏習合の牛頭天王を祀る信仰を「祇園信仰」と言います。
 牛頭天王はスサノオノミコトと同一視されたことによって,現在はどこの八坂神社でもスサノオノミコトがご祭神になっています。

 一方、現在のスサノオ神社も江戸時代までは「牛頭天王社」と称し、ご祭神には牛頭天王を祀っていました。スサノオ神社の総本社は、京都の八坂神社または兵庫県姫路市の広峯神社とされます。



●牛頭天王に守られた蘇民将来

 牛頭天王(またはスサノオ)にまつわる説話に「蘇民将来説話」があります。各地に残りますが、主人公や物語に多少違いがあるようです。
「備後風土記(蘇民将来逸話)」では、

 旅をしていた武塔神(むとうしん)が宿を探して、裕福な巨丹将来(こたんしょうらい)に求めたところ、巨丹将来は断りました。困った武塔神が巨丹将来の弟である蘇民将来に頼むと、蘇民将来は貧しいながら快く受け入れ、粟飯を炊いて精一杯もてなしました。
 数年後、蘇民将来のところに再び武塔神が現れ、自分の正体がスサノオであることを明かし、さらに茅の茎で作った輪を身に付けて「我は蘇民将来の子孫である」と唱えれば、無病息災が約束されるであろうと告げました。
(その後、蘇民将来夫婦と子供以外、すべての悪疫が退治されたという話もあります)

 この説話によって生まれた疫病・厄難災除けのお守りや護符が「蘇民将来子孫也」です。伊勢では「蘇民将来子孫家門」と書かれたしめ縄を玄関に飾り、八坂神社には八角柱の木片に「蘇民将来子孫也」と書いたお守りがあります。
 奥州市の黒石寺はじめ、岩手県を中心に行われる蘇民祭(そみんさい)も蘇民将来にまつわる裸祭りです。

 また、茅の茎で作った輪は、6月30日の夏越の大祓や大晦日の年越の大祓で使われる「茅の輪」となります。大きな茅の輪をくぐることで罪や穢れを祓い、身を清めるとされます。

P6308279-20160630


コロナウイルス感染拡大が一刻も早く終息し、世界に平和な日々が戻りますように。
#StayHome
#ステイホーム