【開運さんぽ・仏閣】
<関東三十六不動霊場 第8番>
飯綱大権現(
高尾山薬王院

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豊かな自然が残り、登山者にも大人気の高尾山

 東京都心から西へ約50キロ。秩父山地の入り口にあるのが高尾山です。
 標高は599メートル(東京スカイツリーの高さ634mより低い!)。都心から近くとも豊かな自然が残り、ケーブルカーや登山道なども完備。昔から手軽に登山できる山として知られていましたが、ミシュラン観光ガイド「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」が3つ星評価を付けたことで外国人観光客が急増。年間の登山者は年間300万人で、世界一とも言われます。
 天候が良ければ、途中の展望台から関東平野を一望でき、頂上の展望台では富士山を臨むことができます。また、東海自然歩道の東京側起点でもあります。

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 そんな高尾山の山中に建つのが高尾山薬王院です。江戸時代から修験道の霊山として知られ、山中にはいくつもの諸堂や修行の場が点在しています。
 紅葉シーズンも終わりに近い、2018年12月5日(水)に参拝しました。

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【縁起】真言宗智山派の関東三大本山のひとつ

 高尾山薬王院有喜寺の創建は天平16年(744年)。聖武天皇の勅令によって、高僧・行基菩薩が東国鎮守の祈願寺として開山しました。その当時は薬師如来をご本尊としたことから、薬王院という名が付きました。
 南北朝時代の永和年間(1375年〜1379年)に、京都醍醐寺の俊源大徳が飯縄大権現(いづなだいごんげん)を守護神として奉祀したのが中興となります。飯縄大権現は不動明王の化身であり、その本質は不動明王・歓喜天・迦楼羅天・荼枳尼天・宇賀神の五相合体です。

 その後は修験道の道場(山伏修行)として繁栄。飯縄大権現は戦国武将たちに崇敬され、小田原北条家や徳川家の保護も受けました。
 江戸時代には、江戸市内にたびたび出開帳を行い、また富士登拝の道の途中に当たるため、富士講の参拝者も多く訪れたそうです。

 現在は真言宗智山派の大本山として、成田山新勝寺、川崎大師平間寺と共に真言宗智山派の関東三大本山のひとつとして知られています。
 関東三十六不動霊場では第8番。修行の道場(東京都)の一番最初です。

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 高尾山といえば天狗の山。薬王院の境内にはあちこちに天狗のお面や像が祀られています。高尾山の天狗は飯縄大権現をお護りする眷属(随身)であり、神通力を持つ存在としてさまざまな伝説が残ります。開運や厄除けなどのご利益を与えてくれるとして崇められてきました。
 高尾山では深い山中で修験者(山伏)が修行をしており、その姿が天狗に見えたのかもしれません。そして、高尾山の修験道は今もなお続いています。琵琶滝と蛇滝では滝修業が行われており、一般の人も参加することができます。

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【道のり】ケーブルカーを使って楽々参拝

 京王線の高尾山口駅から約300m。5分ほど歩くと、ケーブルカー乗り場である清滝駅に着きます。

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 薬王院は高尾山の中腹(標高520m)にありますが、一番簡単に行く方法は、ケーブルカーで標高472mの高尾山駅まで登り(片道6分)、薬王院の参道(1号路)を歩くルートです。ケーブルカーではなく、2人乗りのエコーリフト(約12分)を使う方法もあります。

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 高尾山駅からの参道はゆるやかな杉並木になってます。さる園・野草園、たこ杉を過ぎると浄心門があり、その先で道が二手に分かれます。左の道は急な階段を登る男坂。右は長いですが緩やかな女坂です。先でまた合流するので、体力に合わせて選びましょう。

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 権現茶屋や食事処を過ぎると、右手にいよいよ山門が見えます。高尾山駅から約900m、約20分です。ここまでの参道は舗装されており、お店やトイレもあるので安心です。

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 ちなみに、高尾山には山頂へ向かう「自然研究路」が6コースあります。一番ポピュラーなのは、登山口から山頂まで続く1号路で、薬王院を通る表参道でもあります。登山口からの所要時間およそ70分です。
 薬王院からさらに1号路を登ると、約20分で山頂の展望台に到着します。ただし、薬王院奥の院から先は山道になり、多少アップダウンがあります。整備されていますが、歩きやすい靴や服装をお勧めします。
 自然研究路には植物・生き物の解説案内板が設置されているので、自然を観察しながら登山を楽しむことができます。1号路以外は未舗装も多く、山を歩くためのきちんとした準備が必要です。

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参考ホームページ:


【境内】山の中に散在する天狗信仰のお堂たち

 山門の四方は四天王が守っています。
 山門をくぐった広場には左手に手水舎、右手に大天狗と小天狗の天狗像。納経所、御護摩受付所や土産物店も並んでいます。突き当たりは大本坊(客殿)です。

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 石段を登って仁王門をくぐると大本堂です。
 現在の大本堂は1901年(明治34年)に建立されたもので、建物の彫刻が見事です。内には薬師如来と飯縄権現が祀られており、毎日の早朝、午前2回と午後3回、諸願成就の御護摩祈祷が行われています。

 大本堂左側の石段を上がると御本社(飯綱権現堂)。扉の前で納経を行いました。
 その裏には奥の院が建っています。ちょうど山頂へ向かう1号路にあり、大勢の登山客が横を歩いているのですが、ほとんどは興味がないようで素通りです(残念)。
 奥の院のすぐ後ろには富士浅間社があります。富士講の人たちはここをお参りしたのでしょう。

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 高尾山の頂上まで足を伸ばしましたが、あいにくの曇天で富士山を望むことはできませんでした。
 大本堂まで戻りましょう。大本堂の右手には、恋愛成就や家庭円満の功徳がある愛染明王を祀る愛染堂、歓喜天を祀る聖天堂、弘法大師を祀る大師堂が並んでいます。
 大師堂の周囲には、四国八十八ヶ所のお砂が納められており、お堂を一周するだけで八十八箇所を巡ることができます。特に「願い石」に願い事と名前を書いて巡拝すれば願いが叶うとされます。

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 最後に仁王門前の広場に戻り、納経所で御朱印を頂きました。
 この広場にはたくさんのパワースポットがあります。例えば、願叶輪潜(ねがいかなうわくぐり)は、石の輪をくぐり抜けて煩悩を取り去り、続いて大錫杖(だいしゃくじょう)を打ち鳴らしながら願い事をします。
 倶利伽羅龍(くりからりゅう)は不動明王が持つ倶利伽羅剣(くりからけん)に2匹の龍が巻き付いた像で、世の中の良縁を願って鈴や赤い糸を結んだ五円玉を奉納します。
 八大竜王堂は銭洗いをすることで金運招福・商売繁盛のご利益があります。
 このほかにも紹介しきれないほどの開運スポット、縁起物、お堂があります。

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お寺の大本坊で精進料理に舌鼓を打つ

 境内の大本坊では精進料理をいただけます。
 お寺で出される精進料理とは、仏教の戒律に基づいて殺生や煩悩を避けるように調理された料理で、動物性の食材、臭いや刺激がキツい食材(ネギなど)は使われません。その代わり、たんぱく質が豊富な大豆の加工品や野菜を上手に利用し、肉や魚の料理のように見せかける「もどき料理」が発展しました。自然の風味を大事にし、健康にも良いと注目されています。
 薬王院では通常2種類のお膳(高尾膳3,800円、天狗膳2,800円)が用意されています(要予約)。また、季節限定のお膳もあり、団体用の大広間の利用になりますが、こちらは予約なしでも大丈夫(数に限りあり)。この日は秋限定の「もみじ膳」(2,800円)を頂きました。

 お昼時間を過ぎていたので、団体客用の大広間には先客が一人だけ。
 運んでいただいたお膳には、胡麻豆腐の湯豆腐、揚げ物、もどき弁当(うなぎ蒲焼、牛しぐれ煮、レバーなどを模したもの)などがズラリ! 雑穀ご飯や味噌汁、サラダ、デザートのお汁粉などはセルフサービスです。
 どれも味わい深く美味しい。お腹もいっぱいになってしまいました。ご馳走様でした。

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高尾山 薬王院 有喜寺 たかおさん やくおういん ゆうきじ(飯綱大権現)
住 所:〒193-8686 東京都八王子市高尾町2177
電 話:042-661-1115
ホームページ:https://www.takaosan.or.jp
最寄駅:京王高尾線「高尾山口駅」徒歩約5分。高尾登山電鉄ケーブルカー(清滝駅)またはエコーリフト(山麓駅)乗車。徒歩約20分

宗 派:真言宗智山派
ご本尊:薬師如来(開山本尊)、飯縄大権現(中興本尊)
札 所:関東三十六不動霊場8番
    関東九十一薬師5番
    多摩四国八十八箇所68番
    東国花の寺百ヶ寺 東京8番

※この記事は高野山薬王院公式ホームページ、「関東三十六不動霊場ガイドブック」(関東三十六不動霊場会)、ウィキペディア(https://ja.wikipedia.org/wiki/高尾山薬王院)ほかを参照しました。